我が子を苦しめる難病「魚鱗癬」の原因が解明! 病気への差別をなくすために今、できること【病理研究者の声】
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(7)
◆病気への「差別や蔑視」をなくすために提唱したいこと
しかし仮に治験がうまくいっても、日本で承認されるには、まだまだ時間がかかりそうです。 その間、患者や家族の苦労は続きますが、それを少しでも軽減するため、いわれのない「差別や蔑視」をなくすために、乃村先生は病気のことを正しく理解して欲しい、と以下のような提唱をしたい、と言います。教育現場に対しては、
●魚鱗癬はクラスメートはもちろん、周囲の人には伝染らない。
●とくに夏場の体温調整は苦手で、熱中症になるリスクが高い。地域や場所によってクーラーが必要。
●この病気は知能の発育には、直接的には影響しない。
●患者は皮膚のバリアが弱く、細菌感染などが起こりやすく、その予防のため保湿クリームを1日に数回塗る必要がある。そのための時間と場所を与えて欲しい。
以上は、学校関係者だけでなく、就職・就労に関わる現場の担当者にも、知っていただきたい、と言います。また行政の理解も十分でなく、次のような措置・対処を考慮するべきだと考えます。
●患者の中には、歩くと足の裏や靴が当たる箇所などに水疱ができて、移動に不自由する。四肢に合併症が発生し、移動は車椅子になるケースも多い。皮膚の病気だから軽症と決めつけないで、「身障者手帳」の交付がスムーズにいくようにして欲しい。
●医療機関が請求する「レセプト(診療報酬明細書)」のチェックで、保湿クリームなどの薬剤量が多い、としてはねつけられることがある。魚鱗癬という病気について無理解からくるケースがほとんどで、必要な薬の量であることを、チェックする側も周知徹底して欲しい。
以上のような訴求や啓発とは別に、乃村医師は皮膚科領域の難病の患者らの相談会にも、積極的に参加しています。相談会では患者同士の「ぴあ相談」などでは生活にともなう困りごとなどの相談も受け付けますが、乃村先生は医師の立場から、患者や家族に対し、疾患の現状や治療法の展望などをわかりやすく伝えています。
2018年には、北九州市で相談会が開催されました。
「難病は原因がわからず、治療法も十分でないものがほとんどで、すこしでも不安をやわらげられるよう、医学的な立場からアドバイスができれば、という思いから参加しています。これからも機会があれば、どんどん出かけていきたいですね」(乃村先生)
なお北海道大学病院皮膚科では、2016年1月に日本で初の「魚鱗癬掌蹠角化症(ぎょりんせんしょうせきかくかしょう)」外来を開設しました。
毎月第2、第4金曜日の午後の診療で、 2時間で8人の予約制となっていますが、遠方からいらっしゃる患者さんも多いそうです。担当医は同じく乃村俊史先生です。
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。